脂質とアレルギーセミナー開催レポート

10/20(土)、脂質セミナー『脂質とアレルギー・炎症性疾患制御 ~メカニズムと臨床~』 を開催しました。

 

  

今回は、国立研究開発法人 医薬基盤・健康・栄養研究所の國澤純先生と細木病院 皮膚科・形成外科医の野田理香先生にご講演いただきました。

以下、ご講演内容のまとめです。

 

 

國澤先生 『食用油によって形成される腸内環境とあなたの健康未来』

 

◎卵を食べると下痢をする食物アレルギーモデルのマウスを使った研究

通常のマウスの餌は大豆油が4%含まれる。それを亜麻仁油4%に変えたら下痢をしなくなった。

腸には多くの免疫細胞があるが、マウスの腸管組織を調べたら免疫細胞のところにα-リノレン酸が蓄積されていた。(大豆油入りの餌の場合は、同所にリノール酸が蓄積)

更に、EPAと、エポキシ化したEPA(17,18EpETE)も増加していた。

そこで、化学合成した17,18EpETEを食物アレルギーモデルマウスに与えたところ、亜麻仁油と同様アレルギーが改善。

 

では、他の組織ではどうか?

→鼻炎モデル、接触皮膚炎モデルも17,18EpETEで改善。霊長類(サル)でも、塗布、経口、注射ともに有効。

=腸管から見つかった物質だが、食物アレルギーだけでなく花粉症やアトピー性皮膚炎にも有効の可能性大

 

 

 

 

近年乳幼児期からの食物アレルギーが増加、社会的問題に。

母乳との関係は?

→母マウスを亜麻仁油で飼育すると、その母から生まれた子のアレルギーが抑制できる。

→母乳中に17,18EpETEが含まれていることを確認。受容体の同定済み。マウスだけでなくヒト受容体にも強く反応することも確認。

→妊娠・授乳中にα-リノレン酸をとることでアレルギーを抑えることができる可能性あり。

 

EPAを17,18EpETEに代謝させる酵素はシトクロムP450(CyP450)

CyP450は同じ名前でも多くのサブタイプが存在する=非常に個体差の大きい酵素

→タイプにより薬の効きが変わることは分かっていたが、脂質の代謝にも関係することが分かってきた。

 

EPAを17,18EpETEに代謝させるタイプのCyP450を持ってる人は亜麻仁油で効果が出るが、そうでない人は違う形の代謝物に変換されてしまう可能性あり。(→抗アレルギー効果期待出来ない)

 

また、脂質は腸内細菌や食品に含まれる微生物(発酵食品)の代謝酵素でも代謝される。

→腸内にその菌がいなかったら代謝できない。

 

→これらの酵素や腸内細菌を持たない人のため、代謝物を化学合成して薬として使用する方法、または微生物に代謝させたものを食品として取れる方法を確立すべく、現在研究を進めている。

例)一部の納豆菌(枯草菌)が17,18EpETEを生成→それを食べれば体内で17,18EpETEを作れなくても補うことができる。

 

亜麻仁油でアレルギーを改善させるための3つのファクター

1、まずそれを食べること(←必須脂肪酸なので体内で生成できない。酵素の基質となるものを外から補う)

2、代謝させる酵素(CyP450)を持っていること

3、脂質を代謝させる酵素を持つ腸内細菌がいること

 

※全ての脂質代謝に腸内細菌が必要な訳でなく、ヒトしか代謝できないものもあるため、ヒトの酵素と腸内細菌の酵素の協働で強力な代謝物が生成される

例)リノール酸からアラキドン酸、α-リノレン酸からEPAへの代謝はヒトの酵素

リノール酸からHYAへの代謝は腸内細菌、などなど

 

今回のご講演では、食事由来の脂質によってアレルギーが改善することの発見から、その抗アレルギー物質の同定、代謝メカニズムの解明、酵素や受容体の同定、そしてそれを踏まえて食事や生活をどうすれば良いかや、どのように医薬品を作るか、という話までお聞きすることが出来ました。

また、母乳と子の健康に関しては、まだ論文未発表の内容までお話くださり、今後の進展も楽しみになりました。

 

國澤先生の元々の所属は国立研究開発法人 医薬基盤研究所で、主に創薬を目的としたご研究をされていたのですが、数年前の事業仕分けにより、健康・栄養研究所と合併し、医薬基盤・健康・栄養研究所となりました。

そんな背景もあり、国立の研究機関だからこそ可能な大規模かつ網羅的な研究と、創薬だけでなく食事による疾病の予防にも力を入れられていることが感じられる内容で、事業仕分けの良い面が現れているとても良い例だとも感じました。

 

 

 

野田先生 『脂質とアレルギー』

 

 

◎脂質の基礎

◎アラキドン酸カスケードとオメガ3

◎トランス脂肪酸の害と諸外国、日本の現状

→アメリカ、カナダは今年全面使用禁止、その他の国も量の規制や表示義務がある。

日本では2015年に日本動脈硬化学会他が連名で国に対して表示の要望書を出すも受け入れられず、現在も何の規制もなし。

(こども向け菓子〇〇◯のマーチの輸出用には“Transfat 3g”の表示あり)

 

一方で、国家予算を使った神戸大学の研究では、若年層ほどトランス脂肪酸の摂取量が多く、また冠動脈疾患との関連も大きいとしている。

 

 

◎脂肪酸分画検査

5年ほど前から、アレルギーの患者さんの脂肪酸分画を測っている。

・EPA/AA比

昭和30年頃まで平均1.0

JERIS実施時(1996年~5年間) 平均 0.6

最近の報告では0.4前後、特に若年層ほど低値(30代で0.28、10代では0.1)

(EPA/AA比は0.2 低下するごとに心血管疾患発症リスクが 1.52 倍、冠動脈疾患発症 リスクが 2.23 倍上昇することが分かっている)

 

・脂肪酸を測ると様々なことがわかる

*リノール酸が高値=トランス脂肪酸摂取量も多い可能性が考えられる

*炎症時はリノール酸→アラキドン酸への代謝が促進傾向に

*炎症があるとACSL(酵素)が活性化し、細胞膜にアラキドン酸を蓄える。→アラキドン酸カスケード亢進

*α-リノレン酸を効率よく代謝できない人がいる→EPAをダイレクトにとる必要あり

*EPA摂っても増えない人がいる→吸収が悪い

*飽和脂肪酸摂取量が少ないのにパルミチン酸、ステアリン酸が多い人がいる→糖質から脂質に代謝されやすいため、糖の摂取も注意必要

*スタチン投与でアラキドン酸↑、EPA↓、EPA/AA比低下→LDLが下がっても、心血管系疾患リスク高まる。→EPA投与でEPA/AAを上げる必要あり

 

また、アレルギーや皮膚疾患の患者さんの脂肪酸分画の結果と、食事指導(トランス脂肪酸減らし、EPA/AA上げる)による臨床結果も見せてくださいました。

 

日本リポニュートリション協会でも体内の脂肪酸を測定することを推奨していますが、野田先生のお話を聞き、また更に重要性を感じました。

 

 

~ セミナー全体を通して ~

最先端の研究と臨床現場からの情報をいただき、近年増え続けているアレルギーに対し、投薬やアレルゲンを避けるという方法以外にも、脂質の摂り方を変えることで予防・改善できる可能性をとても感じる内容でした。

ご講演くださいました國澤純先生、野田理香先生、また休日の午前中にも関わらずご参加くださった皆さまに心より感謝申し上げます。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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